vol. 379

201710.16

企業が安定をくれない時代、“普通の女性”が「自分の名前」で仕事するには? シェアリングエコノミーが覆す“働き方の常識”/石山アンジュさん

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『Airbnb』『Uber』など話題のサービスを通じて、最近よく耳にするのが「シェアリングエコノミー」という言葉。何となく気にはなっているけれど、よく分からないという人もまだまだ多いのではないだろうか。そこで、内閣官房シェアリングエコノミーの伝道師である石山アンジュさんにインタビュー。シェアリングエコノミーが世の中にさらに広がっていくと、働く女性たちの生活はどう変わるのかを教えてもらった。

石山アンジュ
一般社団法人シェアリングエコノミー協会 事務局 渉外部長 / 株式会社クラウドワークス 経営企画 内閣官房シェアリングエコノミー伝道師 / 総務省地域情報化アドバイザー
石山 アンジュさん

1989年生まれ。一般社団法人シェアリングエコノミー協会事務局 渉外部長、内閣官房シェアリングエコノミー伝道師、総務省地域情報化アドバイザー、株式会社クラウドワークス経営企画室など様々な肩書きを持ちながら、新しい働き方・シェアリングエコノミーを推進。また世界各国のシェアサービスやコワーキングスペースを体験し、国内外でメディア連載を持つ。2012年新卒で株式会社リクルート入社。人材領域で大手法人総合営業に3年半従事した後、株式会社クラウドワークス経営企画室を経て現職。「個人が本質的豊かさを感じられる社会への転換」を人生のミッションとしている

今、国や地方自治体、若者たちがシェアリングエコノミーに注目するワケ

シェアリングエコノミーとは、所有しているモノや場所、スキルを、インターネットのプラットフォームを介して他人と貸借や売買をする経済活動のこと。例えば、部屋を貸したい所有者(ホスト)と、部屋を借りたいゲストをつなぐ民泊サイト『Airbnb』は、シェアリングエコノミーの代表例として大きな成長を遂げている。

「今、シェアリングエコノミーが日本に浸透し始めている理由は大きく分けて2つです。1つは、インターネット、スマートフォンの普及さらには位置情報や決済システムなどの発展によってネットを通じて個人間での売買・貸し借りが簡単にできるようになったこと。そしてもう1つは、大量生産・大量消費の時代から一転、若い世代を中心に、何でも所有するのではなく、皆で共有し、必要なときに貸し借りをし合うライフスタイルが少しずつ支持されるようになったことが挙げられます」

実際、2017年7月、PwCコンサルティング合同会社が発表した「国内シェアリングエコノミーに関する意識調査2017」によると、日本におけるシェアリングエコノミーのサービスについての認知度は3割程度。年代別に見ると10代、20代ほど高い関心を示しているという。

石山アンジュ

「人口縮小が進む日本において、特に地方は税収の低下により厳しい財政難に陥っています。その結果、路線バスや電車の本数が削減されるなど、行政サービスだけでは地域の暮らしを支えきれないという問題が浮上。こうした背景を受け、“公助”に代わる“共助”の手段として、シェアリングエコノミーが注目を集めています。例えば、北海道天塩町では、相乗り型のライドシェアサービス『notteco』と提携し、地域に住む人が地域の移動を助けあう光景も生まれています。今年6月には政府が発表した『未来投資戦略2017』(成長戦略)の中で、シェアリングエコノミーが重点施策の1つに挙げられるなど、政府からも大きな期待を寄せられています」

シェアリングエコノミーで「好き」や「得意」を収入に変えていく

株式会社情報通信総合研究所の調査によると、2016年のシェアリングエコノミーの市場規模は年間1兆1,800億円。将来の利用意向を考慮すると、今後は年間2兆6,300億円規模にまで発展することが見込まれている。これだけのビッグマーケットとなれば、当然、私たちの働き方に与える影響も大きい。

「今後はますます副業解禁の流れが広まっていくことが予想されていますが、そこでその受け皿となってくるのが、シェアリングエコノミー。確固たるスキルがなくても、自分の所有している場所やモノ、これまでの経験や知識を提供することで、誰もが収入を得ることが容易になり『生活の中で収入を得る』や『趣味の中で収入を得る』といったライフスタイルが一層身近になってくると思います」

しかし、自分の所有するモノや経験、スキルを換金するとなると、なかなかハードルが高く感じてしまう。だが、石山さんは「得意なことや好きなことなら何でも仕事になる時代。構える必要はありません」と話す。

石山アンジュ

「経験やスキルのシェアリングと聞くと、大抵の人が本職の中で培った専門スキルをイメージすると思いますが、シェアリングエコノミーの内容は実にバラエティー豊かです。例えば、出張に出掛ける人に代わって地域の人のペットのお世話を引き受けるとか、『IKEA』の家具の組み立てが苦手な人の代わりに組み立てとセッティングをやってあげるとか、他の会社の商品開発会議に参加をしてアイデアを出すとか、その内容は本当に多岐にわたっています。自分の好きなことや得意なことを活かして、人に喜んでもらえてお金も稼げるのが、シェアリングエコノミーの魅力の1つなんです」

働き方がますます多様化する昨今。起業やフリーランスといった選択も、以前に比べれば身近になった。とは言いながらも、まだまだ柔軟な働き方は浸透しきっていない。「自分で独立して事業を興したい」という女性はきっと少数派だろう。

そんな中で、シェアリングエコノミーは「会社員でありながら自分の名前で何か社会に役立つことをするチャンス」と石山さんは熱を込める。

「自分の名前で何かをやってみたいけど、会社を辞めて一から起業するほどの自信や勇気はないという方って多いと思うんです。そんな方にとって、どこかの組織に身を置きながら、自分の名前で活動できるのが、シェアリングエコノミーのいいところ。たとえば留学経験者や帰国子女の方なら、その独自の経験を活かした就活相談といった方法もあります。人はみんな何かしらモノや経験、スキルを持っている。それをどう活かすかは人それぞれ。どんな人にも、何かを始めるチャンスはあると思います」

「この世から孤独や寂しさをなくしたい」
先行き不透明な時代。確かな資産は人と人のつながり

しかし、一歩踏み出す上でもう1つ気になるのが、利用者間のトラブル。インターネットを通じたやりとりに心理的な抵抗感がある人もいるかもしれない。だが、石山さんはシェアリングエコノミーの根底にあるものを、こう説明する。

「昔はよくご近所同士で調味料だったり、物の貸し借りをしていたという話をよく聞きますよね。シェアリングエコノミーの原風景は、そんな地域の支え合いなんです。インターネットやスマートフォンといったテクノロジーが介入したことで新しく見えますが、概念だけを見れば昔から日本にあったもの。もちろん初めてサービスを利用するときは、評価システムなどをチェックして、その人が信頼の置ける人かどうか自分なりの判断基準を持つ必要はありますが、実はとても人肌感のあるシステムなんです」

そもそも石山さんがシェアリングエコノミー普及のための活動を行っているのも、そんな人とのつながりを持てる仕組みにシンパシーを感じたからこそだった。

石山アンジュ

「シェアリングエコノミーの最大の価値は、『人とのつながり』が資産になるところだ思います。私も世界各国のシェアサービスの利用を通じて海外の人たちとたくさん知り合いになり、その後も『Facebook』上でやりとりをするなど、利用すれば利用するほど世界中に友達ができました。先行き不透明な今の世の中、いくら貯金を貯めて、一生懸命働いて社会的ステータスを築いても、『安心』は買えません。たとえ何が起こっても不変の資産として残るのは、頼れる人やコミュニティなどの人とのつながり。その新たな『つながり資産』形成のインフラの1つがシェアリングエコノミーなんです」

石山さんがシェアリングエコノミーの普及を通じて実現したいのは、意外にも「この世から孤独や寂しさをなくすこと」なのだそう。そのために日々、政府や行政、業界団体と民間事業者の間に立って、渉外活動を行っている

「今の日本って、物質的にとても豊かであるにもかかわらず、なかなか幸せを感じづらい。皆、何となく寂しくて、何となく孤独です。老後のことを考えるとぞっとする、なんていう女性もいるかもしれません。その理由は、人とのつながりが希薄化しているからじゃないかなって。私は12歳の頃に両親が離婚しましたが、ちっとも寂しくなかった。なぜかと言うと、実家がシェアハウスを経営していたこともあって、家族という枠組みにかかわらず、たくさんの人が身近にいて、助けてくれて、常につながりを感じることができたから。

人は他者との関わりで幸せを感じる生き物です。これまでは家族や恋人が、そうした幸せを感じる人間関係の最たるものでしたが、今の世の中は必ずしもそれだけが全てではない。そんな多様な価値観が混在する世の中で、頼れるコミュニティーやネットワークを若いうちから築いていくことは、これからの社会を楽しくサバイブしていく上でも大事なことじゃないかなと思います」

シェアリングエコノミーの目的は、副収入だけではない。心から満たされた人生を送るヒントとして、一度、自分に何ができるか見つめ直してみてはどうだろうか。その先には、今よりもっと幸福感のある未来が待っているはずだ。

取材・文/横川良明 撮影/赤松洋太

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