vol. 372

2017.10.05

“女性に優しい会社”で不幸になる女たち――「男が休めない」「業界ナンバーワン」転職先として要注意な会社とは/白河桃子さん

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将来的に結婚、出産しても長く仕事を続けたい、活躍もしたいからこそ、それが叶えられる環境に転職したい。そのためには、「女性に優しい会社」で働いた方がいいのでは――? そう考える女性は多いはず。

しかし、「一見すると“女性に優しい会社”が、女性の長期的なキャリア継続を妨げていることもある」とジャーナリストの白河桃子さんは指摘する。では、本当の意味で“長く働く”を実現するために必要な企業選びの視点とは? 新著『御社の働き方改革、ここが間違ってます!』(PHP新書)で「女性に優しい働き方は失敗する運命にある」と警鐘を鳴らす白河さんにお話を伺った。

「女性に優しい会社」はなぜ廃れる運命にあるのか

白河桃子
作家・少子化ジャーナリスト 白河 桃子(しらかわ・とうこ)さん
1984年、慶應義塾大学卒業。住友商事、外資系金融機関等を経て著述業に。女性のライフプラン、女性活躍推進、未婚、晩婚、少子化などをテーマに数多くの取材・執筆・講演を行い、少子化ジャーナリスト、作家、相模女子大客員教授として活躍。山田昌弘中央大学教授との共著『婚活時代』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)は19万部のヒットに。その他、『女子と就活』(中公新書ラクレ)、『専業主婦になりたい女たち』(ポプラ新書)、『専業主夫になりたい男たち』(ポプラ新書)など著書多数。内閣官房「働き方改革実現会議」「一億総活躍国民会議」民間議員 最新刊「『逃げ恥』にみる結婚の経済学」(毎日新聞出版)

今の時代、ほとんどの会社が「女性に長く働いてもらいたい」と思っている。労働力不足は国家的な大問題であり、女性はこの国に残された“最後の資源”なのだ。そこで、数多くの企業が、女性がライフステージの変化を経ても長く働き続けられるように、両立支援を手厚くしようと動き出している。

中途採用の求人にも、「産休・育休を取得して復帰した女性が多い」ことや、「時短勤務のワーキングマザーが多くいる」ことをアピールポイントとして掲げている企業も少なくない。それは決して悪いことではないが、「“両立支援”だけでは、真に女性たちが長く働ける環境づくりができているとはいえない」と白河さんは語る。

「資生堂ショック」を思い出してみてほしい。実はこれがいい事例だ。資生堂のように女性社員が多い職場(社員の約83%が女性で、その多くがビューティー・コンサルタントとよばれる販売職)では、かつて出産を機に離職する社員が多く、女性社員が育児をしながら仕事を続けられるようにするのが企業課題だった。そこで手厚い両立支援をほどこすようになったのだが、次第に問題が明るみに出てくる。働き方に制約がある社員が増えてくると、“そうではない人”にしわ寄せがくるようになった。

「とあるアパレルメーカーの社長がおっしゃるには、時短社員が全体の15%を超えると経営を圧迫するようになるということです。制約社員が増えるほど、子どもがいない社員の負担は増えていきますから、社員同士の軋轢も生まれてくる。そうなると、結局時短社員は後ろめたいし活躍もあきらめ、職場のギスギス感はチームの生産性を下げることになります。その状態をただ放っておけば、企業は廃れていく可能性が高いですね」

そこで資生堂は、子育て中の女性にも「土日出勤」や「遅いシフト」ができないかと促した。“両立支援”から、次のステージへ進んだのだ。その裏には、女性だけが家事育児をするのではなく夫婦で分担をすることにより、仕事へのコミットをもう少し増やさないかという示唆もあるだろう。しかしながら、それが「女性に優しい資生堂が、女性に厳しい会社に変わってしまった」と受け止められてしまったのがいわゆる“資生堂ショック”だ。

今なお両立支援の観点から、「女性にだけ優し過ぎる制度がある会社」が増えている。だが、その裏にあるのは子育てしていない人には厳しい環境、一部の人に負荷が掛かり過ぎる環境かもしれない。

勘違い企業がやりがちな、「配慮」という名のやりがい搾取

また、“女性に優しい会社”がよくやりがちなのが、女性への配慮を気にするあまり、仕事の難易度を下げてしまうこと。育休から復帰すると、「時短だから楽な仕事の方がいいだろう」という理由で責任ある仕事から外されてしまったりする。いわゆるマミートラックというやつだ。やる気があり、優秀な女性社員ほど、自分の仕事への意欲を自主冷却しなければやっていけない。

「時短で働く女性に対して、“仕事の量”を減らすのではなく、“仕事の質”を下げてしまう企業が少なくありません。すると、女性の側も『子どもを預けてまでこの仕事を私がすべきなのか』という悩みに陥るようになります。企業も悪気があってそうしているわけではないんですが、完全に配慮すべきポイントが間違っています。育休復帰後の女性たちが必要としているのは、仕事量の調整と、“子どもを預けてやるべきだ”と思える責任ある仕事、そして活躍への期待なんです」

さらに、制約のある社員をフォローしている周囲の社員に対する評価もきちんとなされているかどうかも重要なポイントだ。「本気で女性に長く働いてほしいと思っている企業はそこまでやらないとだめ」と白河さんは念を押す。そうでなければ、フォローされる側の女性も、「何だかいつも申し訳ないな」という負い目を感じながら働くことになる。

働き方改革は「女性活躍」の一丁目一番地

では、「本気で女性に長く働いてほしい」と思っている会社とは? その“本気度”はどんなところに表れてくるのだろうか。白河さんは、「女性だけを優遇する会社ではなく、経営戦略としての働き方改革に取り組んでいるかどうかがカギです」と語る。

白河桃子

「まずは働き方改革で男女含めて業務効率を上げ、無駄な会議や仕事を整理し、長時間労働是正につとめる。またフレックスやテレワークも全員が使えるようにすることなどが、実は最強の女性活躍推進です。テレワークを導入する企業も増えていますが、育児中の女性だけでなく男性も使えているか見てほしいと思います。男だから、女だから、という視点ではなく、男も女も子育てや家事をすることを前提に制度が設計され、運用されているかどうかを入社前にチェックすべきです。テレワークが使いやすいと時短を切ることができますからね」

さらに、女性が仕事を辞めてしまう最大の理由として、「長時間労働を評価する風土」を白河さんは挙げる。

「長時間労働が蔓延し、有給を取らない社員が大勢いることは、女性活躍のブレーキです。女性が管理職になりたいという気持ちを一番削がれるのは『長時間労働を評価する風土』とトーマツX東大中原研の調査によってはっきり示されています」

2025年、団塊の世代が75歳を超えて後期高齢者となり、国民の3人に1人が65歳以上、5人に1人が75歳以上という超高齢社会を迎える。それまでにあと10年ないわけだが、そのような社会の中では介護等の理由で制約社員となる男性が増えることはほぼ間違いない。男性が家庭とのバランスを取りながら幸せに働ける会社かどうか。それが、女性が長く働き続けられる会社かどうかの見極める重要なポイントだ。

「人材には困ってない」業界ナンバーワンの会社には要注意!?

「女性“だけ”に優しい会社」には要注意、ということを書いてきたが、白河さんはもう1つ「業界ナンバーワンの企業にも気をつけて」とアドバイスする。一体どういうことなのだろうか。

「以前、社員の過労自殺が問題となった電通の社長がNHKの記者会見で、『社員の時間を有限だと思っていなかった』と発言しました。決定的に『働き方改革』に対する課題意識が欠けていました。それはなぜか。大手企業、特にその業界のナンバーワン企業には、黙っていても優秀な人材が集まってきます。コストをかけてまで働き方改革を実施して人材を集めたり女性を活用しなくてもいい。変わろうという意識は持ちにくいんですよね。

一方で、これから結婚・出産をする女性社員が一気に増えていくような創業10年以上の“熟れ頃ベンチャー”のような企業は、変わらざるを得ないことを自覚しています。IT企業やベンチャー企業と聞くと、『何だか仕事がきつそう』と思う女性も多いかもしれませんが、40代以下の社長の方が柔軟に変われる可能性を持っているから、一概に大手企業の方が安定しているとは言えないと思います」

さらに、白河さんは「長く働き続けたいなら、“次に転職しよう”と思った時に力が付けられる会社を選ぶ視点も大事」と続ける。

白河桃子

「どんなに注意深く転職先を選んだって、この先何が起こるかは誰にも分かりません。今は安定して見える会社でも、来年どうなっているかは読めないんです。ならば、常に“転職できる力”を身に付けていく方が、ずっと1社で働き続けることを前提に考えるよりも大切なのではないでしょうか」

「転職できる力」が磨かれる職場とは、どんな職場なのだろうか。

「一つは、ちゃんと世の中の新しい技術やトレンドに敏感でいられる職場かどうかではないでしょうか。そして、そういうものに自分も興味を持って日々の仕事に取り組むこと。AIに仕事を取って代わられるなんて議論もありますが、そうなれば新しい仕事も生まれるはずです。世相や政策で変わらない会社も変わっていくこともあるし、世の中の変化にアンテナを張りながら自分のスキルを磨き続けていくことですね」

世の中が変われば、企業も制度も変わっていく。結局、女性が「長く働く」をかなえるカギは、自分自身の市場価値を上げていくことだ。“女性に優しそうな会社”にぶら下がるのではなく、自らの能力・スキルを最大限伸ばしていける環境で、自分に合った働き方を見つけていきたい。

取材・文/栗原千明(編集部) 撮影/洞澤 佐智子(CROSSOVER)


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