vol. 344

2017.07.27

「定年したくない」世界中からの旅行客を迎える82歳のお土産屋さん【連載:地域のライフワークに出会う旅】

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あなたを動かす「しごと」は、何ですか?
地域のライフワークに出会う旅

渋谷の会社勤めから一転、瀬戸内海の小さな島に移住して「自分のしごと」づくりに励む著者が、年齢もさまざまな地域暮らしの先輩たちに、ライフワークを訪ねてまわります。当たり前の日常を飛び出し、外の世界に目を向けてみると、本当に自分を豊かにする「暮らし」と「しごと」のヒントが見つかるかも

 男木島

島在住ディレクター/弁当配達準備中 石部香織 
1988年生まれ、東京都出身。早稲田大学卒。2013年からディレクターとして、Webサイトなどの制作、イベントやワークショップの企画を行う。16年、香川県高松市の男木島へ単身移住。料理開発会や、地域新聞制作などを通した島内外コミュニケーションの促進をはかりつつ、島内へのお弁当配達を企画中。 海山の食材採集と、料理を教わることが趣味。Blog:男木と献立  Instagram:@ogi_kndt  Facebook:@ogitokondatte

「80歳を超えてもまだ続けたいと思うほどに、仕事をしている今が幸せ」。そう話す彼女は、瀬戸内海に浮かぶ人口約170人の小さな島、男木島で働く大江ヤエ子さんです。

男木島 お土産

船を降りると、古い家々の立ち並ぶ坂道のふもとに、白い貝のような形をした新しい建物が見えます。ここは、瀬戸内国際芸術祭の作品であり、島民たちの憩いの場でもある「男木交流館」。その中にある物販コーナーで、彼女は働いています。

男木島 お土産

ここで7年間、お土産や軽食の提供、自転車の貸し出しなどの仕事を続けてきたヤエ子さん。82歳になる今年いっぱいで、定年を迎えるのだそう。「年齢制限がなければ、まだまだしていたいけども」と言いながら、今日も元気に売り場に立つヤエ子さんに、話を聞かせてもらいました。

「『張り合い』いうんがあるよね、仕事にはね」

男木島 お土産

ここができてからずっと、私は入ってるんよ。初めてのときは芸術祭の年で、タコ飯とおうどんを出してたんだけど、そのタコ飯がすごく売れてね。最高に売れたときは、一斗のごはんを炊いたんよ。あのときは忙しかったよねぇ。次の芸術祭ではね、カレーを作って、上に南京豆をトッピングした。男木といえば南京豆だからね。そのカレーも、よく出ました。

当時は9品くらいだったお土産も、後にもっと種類が増えてきた。まず、朝来たらお土産の在庫読みをするんですが、それが大変なんですよ。缶バッチが、何百とあるんですけど、1つでも横になってたりしたら、数が合わん。まぁ、たまにはそういうこともありますよね。

おうどんのネギとか、ワカメとか、大根おろしがあるかないかも見て、ガラス拭いて、掃除して、トイレのティッシュを補充して。11時の船が来てみないと、お客さんが多いかも来んかも分からんけど、その仕事をしてなかったら、さぁお客さんが来たというときにすぐに対応できないからね。

じーっとしてるよりは、やっぱりこう動く方がええね。ここで働かせてもらいよるおかげで、元気ですわ。やっぱり、仕事があるのとないのといったら、気分的に違うよね。ここへ来ると思ったら「明日は仕事じゃから、この仕事をもう今日中にしとかなあかん」と思う。反対に「あぁ、今日はもう仕事がないんじゃ」と思ったら、体が怠けるような感じじゃわ。「張り合い」いうんがあるよね、仕事にはね。ありがたいと思うよ。

男木島 お土産

もともと、この仕事の募集があったときはね、どんな仕事や分からんけども「ほんだらしてみるか」いうて入ったんですよ。そうしたら、芸術祭が始まって。いろんな人と話ができたり、若い人と知り合いになって、電話するようにもなったりね。言葉の分からん外国の人もおる。そのときは、お客さんに向かって「話のできる人はおりませんかー」って言うんですよ。大勢の中には、言葉が分かるような人がおりますわ。「ありがとうございます、助かりました」言うてね。

「幸せになりたければ、若い頃の苦労は買うてもせい」

そういえばこの間、傘を置き忘れて帰った人がおったんよ。本人から連絡が来たから、宅急便で送ってあげたんだけどね。連絡がないなぁと気にしてたら、さっき、丁寧にお菓子が届いて。いろんな人と巡り会うて、いろんな人がおるなぁ思うで。嬉しいです、ほんだから。

男木島 お土産

家に帰るのは17時すぎくらい。それから晩御飯の支度して。まぁ、一人暮らしじゃから簡単なもんで済ませたりするけど、料理を作るんは苦ではないですね。私がお嫁に行ったのは21歳のときで、主人の兄弟が6人おったんよ。子どもも生まれて、多い時は家族が11人おりました。私の兄弟だって10人くらいいて、母親が早く亡くなったから、自分が嫁ぐまではその家の母代わりで、家族みんなの食事を作ってた。

だけどね、一人になった今でもこうして「幸せや」と思うのは、その苦労があったからじゃわ。お嫁にいくまでも、やっぱりいろんなことがあるけども、結婚してからだって、それは大変なときもある。主人も早く亡くなったけど、子どもたちも大きくなって、今はもう辛いこともないよね。「全然ない」と言うたら嘘になるけども、そんなに困ったりすることもないし、こうして元気に仕事に来よるし。

男木島 お土産

だけんねぇ、苦労せなあかんよ。若い頃の苦労は買うてもせい、って昔の人がよく言うじゃないですか。私も、苦労があったから今は幸せなんかなぁと思って、感謝しとるよ。

私はもうこの3月で、定年になるんですよ。年齢制限がなければ、ずっとしたいとは思うけどね、制限やけんしょうがない思って。でも、長年勤めさせてもらったから、喜んでます。

さぁ、コーヒーしようか。いつもこの時間に、横の切符売り場の人たちと飲むんよ。一緒に飲みませんか。

男木島 お土産

男木島
ブログ「男木と献立」
男木島の食卓とライフワークを、写真と共に日々綴っています。
http://kondatte.com/
Instagram:@ogi_kndt
Facebook:@ogitokondatte

連載『地域のライフワークに出会う旅』の過去記事一覧はこちら

>> http://woman.type.jp/wt/feature/category/lifeworkをクリック

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