vol. 258

2017.03.07

依存先を1つに絞るのは危険!人生100年時代の「結婚」について考える/独身研究家・荒川和久さん

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各分野の専門家たちに聞きました!
「女の人生100年時代」未来を豊かに生きるためには?

2050年には先進国に生きる人の半数以上が90歳以上まで生きると予測されている。また、平均寿命が「110-120歳まで上昇する」という見方まであるらしい――。定年をむかえても、余生は30年以上。これまでの生き方の「常識」が劇的に変わる中、女性たちが豊かな人生を送るために必要なこととは――? お金、結婚、キャリア、健康……各界の識者に問いをぶつけてみた!

本特集第二弾でお話を伺ったのは、日本の独身研究家、「博報堂ソロ活動系男子研究プロジェクト」リーダーでもある荒川和久さん。

 荒川和久

博報堂ソロ活動系男子研究プロジェクト・リーダー
荒川和久(あらかわ・かずひさ) さん

1963年生まれ。早稲田大学法学部卒業。博報堂入社後、自動車・飲料・ビール・食品・化粧品・映画・流通・通販・住宅など、幅広い業種の企業プロモーション業務を担当。プランニングだけではなく、キャラクター開発やアンテナショップ、レストラン運営も手掛ける。従来、注目されなかった独身男性生活者に着目し、2014年より「博報堂ソロ男プロジェクト」を立ち上げた。自らも「ソロ男」である。最新著『超ソロ社会 「独身大国・日本」の衝撃』(PHP新書)

人生100年時代をいかに豊かに生き抜くか、というテーマで特に気になる結婚や家庭のこと。一般的に、男性に比べて女性の方が平均寿命は長い。これからの時代、結婚したからといって必ずしも孤独な老後を回避できるかと言えば、答えはNOだ。結婚はもはや不安な未来から逃れるためのリスクヘッジにはならない。今、こうした現実を前にして、女性たちは結婚をどのように捉えるべきだろうか。

みんなが結婚していた時代の方が実は”異常”
古来から、日本の女性たちはもっと自由だった

結婚
国立社会保障・人口問題研究所の推計によると、2035年には15歳以上の女性の未婚率は24.6%にまでのぼると言われている。さらに、離婚や死別により独身となった者も含めると、日本人女性の約半分は独身者になるという予想もある。こういったデータだけを見て、「生涯独身だったらどうしよう」と不安を感じてしまう女性もいるかもしれない。

しかし、荒川さんはこの数字について「何も不安に思う必要はありません」と指摘する。むしろ「皆が結婚していた時代の方が異常だったかもしれない」というのが荒川さんの意見だ。

「高度経済成長期、皆婚と呼ばれ、日本の婚姻率は97%でした。当時の女性にとって、結婚は就職のようなもの。自らの経済的基盤を獲得するための手段であり、ある意味死活問題だったんです。だから、女性にとっては『結婚しないという選択肢』がなかったわけです。ですが、日本の女性がずっとそうだったかというと決してそうではありません。長い歴史の中でも、むしろ皆婚時代の方が異質なものだったんですよ」

確かに、今や「結婚=永久就職」という言葉は死語同然。女性の社会進出が進み、経済的に自立している女性も増えた。見方を返れば、多様な未来を選べる自由を獲得したことの象徴とも言える。

最近では、3組に1組が離婚すると言われていますが、例えば、江戸時代の日本の離婚率は世界トップレベルだったんです。『三行半(みくだりはん)』ってありますよね。あれは、夫が一方的に妻に突き付けるものだと勘違いしている人が多いですが、離婚は双方の承諾がなければできませんでした。そもそも、『三行半』とは『離縁証明書』でもあり、『再婚許可証』なんです。だからこそ当時は再婚も活発で、4~5回の再婚なんて当たり前でした。土佐藩の法律に『離婚は7回してはいけない』とわざわざあったくらいですから。離婚が急激に減少したのは、明治以降制定された明治民法の影響によるものです。私たちが今『常識』だと思っていることは、決して普遍的なものではありません」

結婚とは義務ではない。「結婚してこそ一人前」という結婚規範によって「結婚しなくちゃ」と不安や焦りを感じている女性がいるとしたら、「そんな呪縛からは早く自由になった方がいい」と荒川さんは喝破する。

「結婚しない方がいいと言っているわけではありません。ただ、結婚はゴールではないのです。結婚していようとしていなかろうと、幸せかどうかは人それぞれ違います。結婚して幸せだという人もいるでしょうし、結婚したからといって全員が幸せとは限りません。『こうあるべき』という1つの型にはまろうとして無理することこそ、最も不幸なことかもしれない。特に、女性が陥りがちなのは、『結婚という状態への依存』です。結婚さえすれば幸せになれるという考え方は危険です」

たくさんの依存先を持つことこそが真の自立の第一歩

荒川さんが提言する、これからの時代を豊かに生きるための秘訣は次のとおりだ。

「まず大事なことは、既婚未婚に関係なく、一人一人が『ソロで生きる力』を身に付けることです。それは、決して山奥で仙人のようなサバイバル生活を送る能力のことではありません。むしろその逆。いろいろな人とつながる力です。人は誰かと関わりながら生きるものです。自立とは、誰の力も借りないということではなく、頼れる依存先を複数持つことで生まれるんですよ。依存先が1つしかないという状態こそ危険なんです」

「ソロで生きる力」がない依存型人間について、荒川さんは恋愛を例にして次のように解説する。

「恋愛依存症に陥りがちな人は、相手だけに依存しがちです。『私にはこの人しかいない』と相手のことだけを見つめ、寄り掛かり、相手がいることでしか自分のアイデンティティーを確立できなくなってしまう。自分自身の喪失です。それは、まさしく依存先がその人しかいないという状態です。最初は幸せを感じられるかもしれませんが、そのうち『この人がいなくなったらどうしよう』という不安のあまり、相手を極度に束縛してしまったり、結果的にお互いが不幸になってしまうものです」

一方で、プライベートを犠牲にして「仕事だけ」にかける女性に対しても、荒川さんは疑問を投げかける。

「それも、仕事に依存していることにならないでしょうか。恋人が仕事や会社に変わっただけで、恋愛に依存している女性と結局は同じです。順調にいっている仕事も未来永劫そのままいくとは限らないし、会社だっていつ倒産するかは分からない。1つの仕事、1つの会社しか選択肢がないという人も、結局は真に自立しているとは言えません」

若いうちに必要なことは、とにかく人とたくさん出会うこと
新しい出会いの分だけ、新しい自分が生まれていく

自分が何歳のときに誰とどこでどんなふうに生きているのか。人生100年時代、かつての右肩上がりの時代のように長期的な未来を容易に予測できない。だからこそ、私たちは「結婚」や「仕事」といった特定の状態に依存するのではなく、たくさんの人とのつながりを持つことで、どんなリスクにも対応できるよう、まず自分自身が自立する意識を持つことが重要なのだ。

「恋人も仕事ももちろん大事です。でも他にも友達や趣味、地域コミュニティーの活動、例えば、クラウドファンディングでの活動など、性別や年代を超えたいろいろな人とつながりをつくっていってください。繰り返しになりますが、真の自立とは、頼れる依存先を複数用意できることなのです」

しかし、つながりを増やすと言っても、日々の生活の中で手一杯というのが実情。だが、そんな若い女性にこそ、荒川さんは「自分の中にある多様性に気付いてほしい」と背中を押す。

若いうちに必要なことは、とにかく人とたくさん出会うことです。でも、出会うだけじゃだめ。異業種交流会で名刺交換なんかしても意味はありません。表面的な知り合いの数を増やすのではなく、面と向き合って対話し、交流することです。

よく『本当の自分』なんて言う人がいますが、そんなものはどこにもない。唯一無二の『本当の自分』という幻想に縛られるのは、さっき云った依存先が1つしかないのと同じです。自分というものは、向き合って話をした人の数だけ存在する。

例えば、Aさんと話している時の自分と、Bさんと話している時の自分とでは違うはずなんです。それは、人と出会って話をした分だけ、自分の中に新しい自分が生まれているから。BさんよりAさんの方が好きだと感じるのは、Aさん本人が好きというより、Aさんといる時に生まれた自分自身が好きだということなんです。

いつも同じメンバーで女子会するのもいいですが、とにかくいろいろなコミュニティーに足を運んで、さまざまな人たちとコミュニケーションを取ることをオススメします。新しい出会いの分だけ、新しい自分が随時生み出されていくはずです。依存先を複数用意することが自立であるのと同様に、自分の中に多様な自分自身を生みだしていく。それこそが、ソロで生きる力であり、自己肯定にもつながります。自己肯定ができれば、笑顔も増えるし、自然と他者にも優しくなれます。それが結果的に、状態に依存することなく『幸せ』を感じられるようになる近道だと思います」

取材・文/横川良明

 荒川和久

『超ソロ社会 「独身大国・日本」の衝撃』(PHP新書)

2035年、日本の人口の半分が独身になる!
未婚化・非婚化に加え、離婚率の上昇や配偶者の死別による高齢単身者の増加など、確実に進行する日本のソロ社会化。高齢化や少子化ばかりが取り沙汰されているが、このソロ社会化こそ、日本が世界に先駆けて直面する課題だ。「個」の生活意識や消費意識、価値観はどのように変化していくのか、博報堂ソロ活動系男子研究プロジェクト・リーダーが問う日本の未来
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