vol. 46

2016.04.06

「タイムリミットはあと3年」働き方改革の有識者たちが危惧する日本の現状/FJ緊急フォーラム・イベントレポート

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Women Will
Google『Women Will』の取り組みに見る!
未来をハッピーに変える「働き方改革の今」

「女性活躍」という言葉はよく耳にするようになったけれど、女性を取り巻く労働環境が劇的に良くなっているという実感は持ちづらい。「世の中はそう簡単には変わらないもの」と、悲観モードになっている人も少なくないのでは? しかし、働く女性たちの希望となるような、変化の兆しは確かにある。この連載では、女性の社会進出を支援するGoogleのプロジェクト 『Women Will』から、私たちの仕事人生をよりよく変えるきっかけとなるような取り組みを行う企業、人々などにフォーカスを当て、日本社会で起こっている「働き方改革の今」をお届けしていきます。

2016年3月18日、NPO法人ファザーリング・ジャパン(以下、FJ)主催の『「ニッポンの働き方は本当に変えられるのか!? 〜長時間労働がなくなれば企業や社会はもっと豊かになる」』イベントが東京・京橋にて実施された(後援: Google 『Women Will』)。

同イベントのパネルディスカッションに登壇したのは、下記の有識者たち。

FJ緊急フォーラム
前列左から
■安藤 哲也さん(NPO法人ファザーリング・ジャパン代表)
■白河 桃子さん(ジャーナリスト/一億総活躍国民会議民間委員)
■小室 淑恵さん(ワーク・ライフバランス代表取締役社長)
■堀江 敦子さん(スリール代表)
■塚越 学さん(東レ経営研究所コンサルタント/FJ理事)
■中根 弓佳さん(サイボウズ執行役員)
■大西 徳雪さん(セントワークス代表取締役社長)
■羽生 祥子さん(日経DUAL編集長)
■川島 高之さん(元祖イクボス/大手商社系企業社長/FJ理事)

FJ代表の安藤さんがファシリテーターを務め、議論が交わされた。

開場の定員は120名満員。運営側によれば、「イベントの告知を始めてからわずか2時間で満席に達した」そうで、同イベントテーマへの世の中の関心の高さが伺われる。

“今を逃せばおしまい”政府が働き方改革に本気で乗り出した

各登壇者から「働き方改革」をテーマに問題提起が行われていく中で、特にイベント参加者の関心を集めたのは、政府が設置した産業競争力会議の民間議員としても長時間労働の是正を推進しているワーク・ライフバランス代表の小室さんの提言だ。

FJ緊急フォーラム
「政府がワークライフバランス(以下、WLB)や長時間労働についてようやく真剣に話を聞いてくれるようになったのは、2015年12月ごろのこと。それまでは、どんなにこのテーマの話をしようとしても『もう少しトーンを抑えるように』と要求されるだけでした。では、なぜこのタイミングで政府が本腰を入れて働き方改革に取り組もうということになったかというと、この3年で女性も男性も『働きながら子育てができる』社会を作り、出生率を上げないと、日本は経済破綻を起こすということを、政府が理解し始めたからです」

国の経済的な成長は、国民の数(労働人口の多さ)に規定されるところが大きい。安倍総理も、「働き方改革は次の3年間の最大のチャレンジ」として認識し、「日本再興戦略」(今後5年間の経済成長戦略について方針を定めたもの)にも「長時間労働の是正は、この国の経済成長に大きな効果をもたらす」という文脈を盛り込んでいる。

東レ経営研究所コンサルタントの塚越さんも、「長時間労働は、成熟した日本社会の最後のラスボス」と表現し、企業も労働者も、自分ができることからWLBを改善していくように訴えた。

職場で感じる“働きにくい”は時間に関わることがほとんど

また、2児の母である小室さんは自身の過去を振り返り、長時間労働が常態化した環境で働く女性たちについて、「2人目を産もうなんていう気には到底なれない」と語気を強めた。

日経DUAL編集長の羽生さんも、サイト上で育児中の男女から取得したアンケート結果(2016)を基に、「育児中のママ、パパに『子どもができてから職場で働きにくい、気まずい、肩身が狭い』と感じたことがあるかと質問したところ『はい』と回答した人は8割以上。さらに、どんな時にそう感じるかを聞くと、そのほとんどが『時間』に関わることでした」と発表。

具体的には、「子どもの病気で早退するとき」、「残業したいのに帰宅しなければいけないとき」、「保育園や学校の行事で会社を休むとき」、「時短勤務で働くこと」など、職場全体の労働時間に自分が合わせられないと感じたときに多くの育児中社員が「働きにくい」と感じているとのこと。

職場で感じるこうした“申し訳なさ”や“肩身の狭さ”は、女性の出産意欲をそぐだけではなく、仕事そのものへの意欲を低下させることにもつながっていく。最近、保活に関するブログが話題に上がったが、もし夫婦のどちらかが仕事を辞めて育児に専念したとしても、夫婦いずれか一人の収入だけで家族全員を養い続けるのは簡単ではない。家庭の経済状況が安定しなければ、「2人目の子どもを産もう」という気にはきっとなれないだろう。

若者にとって魅力的でない会社はこれからの時代を生き残れない

さらに、学生や社会人の「仕事と家庭の両立」支援事業を行うスリール代表の堀江さんからは、学生約100名を対象にしたアンケート結果の報告があった。

FJ緊急フォーラム
「これから就職する学生たちに、どんな企業で働きたいか『プライベートの時間が取りにくい大手企業』と『プライベートの時間が取れる中小企業』の2択で聞いたところ、7割以上の学生が『プライベートの時間が取れる中小企業の方に魅力を感じる』と回答していました」(堀江さん)

ジャーナリストの白河さんも、「欧米を中心とする諸外国の企業では、若者にとって魅力的な企業へと社内環境をチェンジするということを当たり前のように行っています。優秀な人材の獲得は、経営上の最重要課題の1つだと皆認識している」と念押しした。

ファシリテーターの安藤さんは、「僕が以前にいた会社もそうだったけれど、若手が労働時間のことをとやかく言うと『何を甘ったれたことを言っているんだ』と日本の企業では言われてしまう」と続け、日本社会に蔓延する“精神論”的な人材育成のあり方に疑問を呈した。

大手商社系企業社長の川島さんは、「もう、“WLBが大事かどうか”なんて議論をすること自体を終わりにしたい。もう、“やらないと立ち行かない”ところまで来ているんです」と働き方改革に対して腰の重い企業に警鐘を鳴らした。川島さんの企業では、この3年でWLBの改善に取り組み、いまや社員の大半が定時で退社している。だが、企業利益は純増し、社内で重要なポジションに就く育休明けの女性社員も増えているそうだ。

同じく、セントワークス代表取締役社長の大西さんも、同社でWLBの改善に徹底して取り組んだ結果企業利益が向上したことを報告。短時間で効率的に仕事をし、成果を出していく人を評価するような人事制度を柔軟に作っていく必要があるとアドバイスした。

女性のためだけに行う改革はもう時代遅れ

同イベントに登壇した有識者たちの言葉からは、長時間労働の是正やWLBの改善についてもはやのんびり議題に挙げている場合ではないという“切迫感”が伝わってくる。繰り返すが、「タイムリミットはあと3年」なのだ。

こうした現状に国からの後押しも加わり、「これからWLBの改善に取り組んでいかなければ」と重い腰を上げる企業も増えていくだろう。

だが、とにかく女性たちの労働時間を短くすればいいというものではない。

サイボウズ執行役員の中野さんは「働きやすい環境というのは、女性とか男性とか、属性で決まるものではないし、ライフステージによっても変わってくる」と言及。同社での働き方改革の事例を紹介しながら、社員一人ひとりの希望や実情に合わせた働き方が実現できるような企業風土をつくっていくことの重要性を語った。

WLBは自分で勝ち取っていくもの

FJ緊急フォーラム
最後に、白河さんは「国力とか少子化とか、そういった観点から長時間労働の是正を訴えるお話が多かったけれど」と前置きした上で、「そんなスケールの大きな話ではなくても、一人ひとりが『働きたい』と思ったとき当たり前のように働ける社会、『子どもがほしい』と思ったときに安心して子育てしながら仕事を続けられる社会ができたら女性も男性も幸せになれると思う」と話し、イベント参加者の共感を得た。

では、そのような社会をつくるために、私たち一人ひとりにできることはあるのだろうか――。

大手商社系企業社長の川島さんは「WLBは自分で勝ち取るものという意識を忘れないでほしい」と助言。企業がどうにかしてくれるのを待つだけでなく、労働者一人ひとりが効率のいい働き方や持続可能な働き方を考え、実践していくべきだと話した。

ファシリテーターの安藤さんは、「職場だけでなく、一消費者としてできることだってある」と指摘。

「僕は、夜22時以降はコンビニに立ち寄って買い物をしないように自己規制をしている。それは、“過剰なサービス”に自分が加担しないようにすることで、本当は必要のない深夜労働や長時間労働を世の中からなくしていくことにつながると考えるからです」(安藤さん)

日本の“のっぴきならない状況”を変えるのは、そう簡単ではないように思える。だが、せっかくなら私たち一人ひとりにとっての幸せな未来を目指し、積極的な一歩を踏み出したい。明日の仕事を1時間はやく終わらせるにはどうしたらいいのか考えてみるも良し。仕事やプライベートで何か自分なりのルールを決めてみるも良し。やれることから始めてみるのはいかがだろうか。

取材・文・撮影/栗原千明(編集部)

連載『働き方改革の今』の過去記事一覧はこちら

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