08
OCT/2015

「妊活休暇」の申請は年間約200件!“障害の排除”が人事が果たすべき使命/株式会社サイバーエージェント

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「妊活休暇」の申請は年間約200件!“障害の排除”が人事が果たすべき使命/株式会社サイバーエージェント

世界の先進国と比べ、“女性が働きにくい国”と言われることも少なくない日本。しかし、そんな現状を変えようと、奮闘している経営者たちがいる。彼らは今、どんな問題意識を持ち、どんな働き方改革を進めているのだろうか。そして、その改革を推進する背景にある、人が働くということへの思いとは――?

今回ご登場いただくのは、株式会社サイバーエージェント執行役員の曽山哲人さん。「妊活休暇」などを含む女性社員の支援制度『macalon(マカロン)パッケージ』の導入など、社会に大きなインパクトを与える同社の人事制度づくりを手掛けてきた立役者だ。

「妊活休暇」の利用件数はこれまでに200件以上

「妊活休暇」の申請は年間約200件!“障害の排除”が人事が果たすべき使命/株式会社サイバーエージェント
株式会社サイバーエージェント
執行役員 人材開発本部 本部長
曽山哲人さん
1974年生まれ。上智大学文学部卒。新卒入社した伊勢丹を1年で退職し、99年にサイバーエージェントへ転職。インターネット広告事業本部営業統括を経て、2005年に人事本部人事本部長に就任。08年より取締役人事本部長。15年より現職

2014年5月、サイバーエージェントは女性社員向けの支援制度を大幅に拡充して話題を呼んだ。その目玉となったのが、『macalonパッケージ』。女性特有の体調不良の際に取得できる「エフ休」、不妊治療の通院などを目的として取得可能な「妊活休暇」、専門医のカウンセリングを受けられる「妊活コンシェル」、子どもの急な病気などを理由に在宅勤務できる「キッズ在宅」、子どもの学校行事や記念日に取得できる「キッズデイ休暇」の5つの制度で構成されている。

出産後の仕事と育児の両立を支援するのはもちろんのこと、出産前の“妊活”から会社がサポートするのは極めて珍しい事例だろう。同社にとっても、大きく社員の働き方を改革する一手だった。

制度の導入から約1年4カ月が経ち、社員の働き方にはどのような変化があったのだろうか。

「『macalonパッケージ』導入後、私たちの予想を大幅に上回る利用がありました。5つの制度のうち、最も利用数が多かったのが『妊活休暇』で、導入から1年強で約200件。月平均で10件から15件ほど、最も多い月で24件の利用がありました。それに続くのが『キッズデイ休暇』で約150件、月平均で10件強です。こちらはママ社員だけでなく、パパ社員の利用も多いのが特徴。『macalonパッケージ』は、女性が長く働ける職場環境を目指して導入した制度ですが、もちろん男性社員も利用できます。他の制度も月平均で3件から5件ほどのコンスタントな利用があり、これほど大きな反響があるとは私も驚いています」

この利用実績は、『macalonパッケージ』が社員たちのニーズを的確に汲み取ったものであることを証明している。実際に制度を利用した社員からは、「会社が公式に『妊活や子どもの学校行事のために休んでいい』とアナウンスしてくれたことで、より柔軟に働けるようになった」という声が多く聞かれるという。

「もともと弊社には自由な働き方を尊重する社風が根付いていましたし、『不妊治療のために休暇を取りたい』といった相談を受ければ個別に対応してきました。それでも社員の中には『妊活のために会社を休むことが、社会通念上許されるものなのか』と判断に迷うことがあったのです。それを会社がOKだと公言したことで、迷いを払拭できたのでしょう。私は人事が果たすべき役割として、“障害の排除”が非常に重要だと考えています。仕事をする上で障害になる不安や迷いをできるだけ取り除けば、社員は力を発揮してくれる。人事制度はそのためのものであるべきです」

どんな疑問や課題でも議論の遡上に載せていい

「妊活休暇」の申請は年間約200件!“障害の排除”が人事が果たすべき使命/株式会社サイバーエージェント

結婚・出産を予定している社員や、子育て中の社員が『macalonパッケージ』を歓迎するのは想像がつく。だが、制度の利用者が仕事を休んだり、急な在宅勤務になった時、それをサポートするのは同じ職場の人たちだ。企業によっては、未だに産休や育休を取得する女性への理解が進まないケースもある中で、サイバーエージェントでは“当事者ではない人たち”の理解をどのように得ているのだろうか。

「正直、管理職はやりにくい部分もあっただろうと思います。今回の制度では、『休暇の取得理由を周りに知られたくない』という社員に配慮して、通常の有給休暇や妊活休暇を含め、女性社員が取得する休暇はすべて『エフ休』という名称で申請できるようにしたのですが、上司にしてみれば部下が休んでも本当の理由が分からない。両者の間に信頼関係があれば問題ないのですが、もし仕事で成果を出せていないのに休暇の取得回数ばかり増えるメンバーが出てきたら、管理職は不安になって当然です。ですから制度の開始に当たって、私たちから管理職に『不安や不審を抱いたら、遠慮なく人事に相談してください』と伝えました。そうすれば、担当者から本人に事実確認をしますからと。起こり得る問題を想定し、事前に会社からメッセージを発信した結果、管理職からのクレームはほとんどなかった。むしろこの制度を応援してくれる人ばかりで、管理職の協力には本当に感謝しています」

『macalonパッケージ』の直接の受益者は将来の妊娠・出産を望む社員やママ社員・パパ社員だが、その人たちが仕事に打ち込める環境を作れば会社全体の成果にもつながり、結果的に社員全員が受益者になる。「この制度は、あくまで会社が伸びていくためのものである」という意義を会社側が丁寧に説明し、直接の受益者でない人たちへの気遣いを欠かさなかったことも、『macalonパッケージ』が成功した大きな要因と言えるだろう。

一方で、「実はこの制度から一番遠いところにいるのが、まだ結婚や出産を具体的にイメージしていない若手の女性社員たちなんですよ」と曽山さん。制度の感想を聞いても、「私にはよく分からない」という答えが返ってくることも。

「新卒で入社して1年目や2年目だったら、それも当然ですよね。だから若手社員とは、『macalonパッケージ』を通じて自由な議論ができればいいと考えています。『私たちはまだこの制度を使わないけれど、他にこんな制度や環境があればうれしい』といった率直な声を聞くきっかけになればいいと思うし、実際にその機会も増えている。妊活や女性特有の体調不良といったセンシティブなテーマを含んだ制度を会社が提供したことで、どんな疑問や課題でも議論の遡上に載せていいんだよというメッセージを全社員に発信できた点は、会社にとっても大いにプラスになったと感じています」

こうして社員の声を聞く機会が増えたことで、「女性の働き方は、まだまだ支援できる余地があると気付けた」と曽山さん。今後は、いわゆる“小1の壁”問題をサポートする仕組みなども考えていきたいと語る。

最初から諦めずに意思表明した人だけが得られるものがある

「妊活休暇」の申請は年間約200件!“障害の排除”が人事が果たすべき使命/株式会社サイバーエージェント

社員の働き方改革を進めている人事部門の責任者として曽山さん個人は、そもそも“働くこと”の意味をどのように考えているのだろうか。

「働くこととは、自分の人生を彩り、豊かにしてくれるものであり、多くの人にとってそうあるべきだと考えています。そして、人生を豊かにするには、“自分らしくあること”が大切。仕事でも、営業成績でトップを目指すことが自分らしいと思う人もいれば、お客さまにありがとうと言われることが自分らしいと思う人もいる。自分らしさは人それぞれなので、それを実現できる働き方ができれば、精神的にも充実するはずです」

だが実際には、毎日会社で“自分らしくない”仕事ばかりやらされていると感じている人も少なくないかもしれない。そんな人へ、曽山氏は「もっと自分の思いを口にしてほしい」とメッセージを送る。

「今より自分らしい仕事が他にあると思うなら、『この仕事をやってみたい』と口にしない限り、道は開けません。自分から手を挙げて選んだ仕事と、人からただ与えられた仕事をやるのとでは、やる気がまったく違うと思うんですよね。上司に自分の意思を伝えにくい環境にいる人も多いかもしれませんが、勇気を持って口にしてみてほしい。たとえ希望が通らなくても、“最初から諦めずに意思表明した自分”だけが得られるものが必ずあるし、それ自体が自分らしい生き方だと思えるんじゃないでしょうか。組織に属する以上、誰もが会社への依存と貢献を求められるのは事実ですが、自分の思いをゼロにする必要はない。そのことはぜひ心に留めておいてもらえたらと思います」

取材・文/塚田有香 撮影/洞澤佐智子(CROSSOVER)

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