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NOV/2014

厚労省でお茶汲みからキャリアをスタートした村木厚子事務次官が語る、女性たちの“ゆるく働く”思想に潜むリスク

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女性活用が叫ばれるようになり、国や企業が何やらいろいろやっているらしいのは分かる。でも、働く女性たち自身の意欲やモチベーションはどこか置いてけぼりではないだろうか。
「管理職になってもらわないと」と思われているけど、「そんなの私にはできない・・・」。「育休後の復職はどうする?」って言われても、「家庭との両立をしたいからゆるめに働きたい・・・」。
世間と自分の意識とのギャップにもやもやを感じている女性は多いのが現実。
“活用”という言葉は、「自力で動かないものを他者がうまく使う」という響きに聞こえてしまうもの。もっと女性たち自身が「働きたい!」と思う社会になるには何が足りないんだろう。その答えを探るべく、さまざまな切り口から識者に聞いてみた。

厚生労働省で事務次官を務める村木厚子さん。男女平等が当たり前ではなかった時代に入省し、これまで長いキャリアを築いてきた村木さんが考える、女性が長く働き続けるために必要なマインドとは?

村木厚子
厚生労働省 厚生労働事務次官 村木厚子さん
高知大学卒業後、労働省(現・厚生労働省)入省。雇用均等・児童家庭局長などを歴任する。2009年の郵便法違反事件で逮捕・起訴されるも、2010年9月に無罪確定。復職後、内閣府政策統括官を経て現職。福祉や生活保護、ホームレス対策などに携わる。2013年7月にも、厚生労働省次官への起用が発令される。自らも二児の母として子育てと仕事を両立した経験を持ち、安倍政権の女性活躍推進に注力する。著書に『あきらめない~働くあなたに贈る真実のメッセージ~』(日経BP社)など

制度上は無いはずの男女差別
ただ、職場の雰囲気は違った

私が労働省(現・厚生労働省)に入省したのは、男女雇用機会均等法ができる前のこと。女性は二十代半ばで結婚退職することが一般的な時代で、民間企業の大卒の女性採用も今より圧倒的に少ない状況でした。そんな中、「自立した人生を送るためには、自分自身が生涯をかけて仕事をしていくのが大切だ」と考えていた私は、女性も長く働き続けられる仕事とされていた公務員の道を選びました。

当時の公務員は制度上、男女平等でしたし、結婚や出産によって仕事を辞めさせられることはありませんでした。ですが、実際はキャリア採用される女性は20〜30人に1名程度。私が入省した時も、事務系総合職で採用された女性は、全省庁でたったの5名しかおらず、非常に少数派でしたね。また、制度上で差別はなくても、女性は朝早く出社して同僚のためのお茶汲みや掃除などの雑務をすることが当然という空気がありました。当時の上司は、「キャリア採用である以上、男女平等であるべき」と闘ってくれましたが、組織の慣行を変えることはできず、女性に課された雑務と本来の官僚としての仕事を並行していくことになったのです。

また、「女性は優しく扱うもの」と考えている男性上司も多く、仕事で女性が成長するのが難しい環境でもありました。ただ、それでは仕事を続けていけなくなると思い、「男性同様に厳しく指導して、ちゃんと仕事をさせてください」と自分からお願いしたこともあります。そして、他の同僚と同じ仕事をこなしながら、朝は誰よりも早く職場に行ってお茶汲みや掃除をすることも続けていました。

周囲の先輩を見渡したとき
チャレンジしている女性の方が輝いて見えた

村木厚子
自分がここで長く働き続けるためには、人一倍の努力をすることが大切だと考えて、がむしゃらに働き続けた新入社員時代。自分ではすごく頑張っているつもりでしたが、職場の女性上司を見ると、頭脳明晰なスーパーウーマンばかりで、「私はあんな風にはなれないのでは……」と落ち込むこともありました。しかし、働き始めて3~4年が経ち、後輩の指導を任されるようになったときのこと、後輩に仕事を教えていく中で、自分が入省当時から大きく進歩していることに気付いたんです。「あ、私もちゃんと成長してるんだ」と感じられたことが、自分の自信につながり、仕事へのモチベーションになったことを今でも覚えています。

私はもともと、長く働きたいとは思っていたものの、「出世がしたい」とは全然考えていないタイプでした。でも、5年目で係長に昇進し、10年目で課長に昇進。任される仕事の責任が次第に大きくなっていくことを実感するうちに、自分自身も大きく成長していると感じて。それが、「仕事をもっと続けていきたい!」という気持ちを持続させてくれるものになりました。今の時代、ほとんどの企業は「“できる女性”を育てたい」と考えているものですが、管理職になったり、人を指導する立場に立つことに躊躇してしまう女性は多いでしょう。しかし、「無理したくない」という理由で同じ仕事を続けるよりも、自分に多少の負荷をかけて働くほうが絶対に成長を実感できるはずだと思うのです。

ただ、私自身も20代後半の時期は、「少しゆるく働くのもいいかな……」なんて考えたこともあったんですよ。でも、結果的にその道は選ばなかった。理由はとても単純で、周囲で働く先輩たちを冷静に見回したことがきっかけ。「女性だからこの程度でいいや」という働き方をしている人よりも、常に新しいことに挑戦して成長を続けている女性のほうが圧倒的に魅力的に見えたからなんです。つまらなそうに働く姿はどうしても素敵じゃない。それならば、多少大変なことがあってもイキイキとチャレンジを重ねていく働き方をしようと決めました。そうでなければ、後々になって後悔してしまいそうだから。

お金で時間を買っても
仕事を続けて行けばいつか回収できる

村木厚子
その後、「長く働き続けよう」という意思が揺らいだことが一度だけありました。それは、第一子を生んだ後のこと。子どもに持病があることが分かり、仕事との両立は非常に難しくなったのです。ただ、そう簡単に仕事を手放すこともできず、家庭との両立のためにできることは、何でもしてきたつもりです。

まず、何よりも大変だったのが、家族とともに過ごす時間の確保。それで、とにかく効率化できるものはしようということで、お金で買えるサービスは割り切って使おうと決めましたね。例えば、食器洗い器や全自動乾燥機なども買い揃えましたし、保育所への送り迎えもタクシーを使うなどし、家族と過ごす時間をつくることを第一にしていきました。ここでの出費が大きく感じてしまう人もいるかもしれませんが、長い目で見れば、子育てに手間が掛かるのは一時的なこと。お金で時間を買ったとしても、仕事を続けていけば回収できるものですから。

その他に気を付けていたのは、職場の人からの信頼を失わないようにすることですね。絶対に必要なとき以外は仕事を休まないようにするとか、残業しないで済むように昼間に思いっきり仕事をするとか。あとは、12月末の仕事納めの日など、職場がそんなに忙しくない雰囲気のときに、子供を連れて出社して同僚に紹介したんですよ。そうしたら、これが良い“デモンストレーション”になったみたいで(笑)、職場の人の方から子どものことを心配してくれたりするようになったんです。やっぱり、顔が見える相手のことは気遣いたくなるものなんでしょうね。

この国で女性が長く働き続けようと思った時、そこにはたくさんのハードルがあります。それを1つひとつ取り除くことが国の仕事であり、私自身の今後の課題です。保育所や学童保育などの支援施設をきちんと整備していくことは急務ですし、女性の活躍に積極的に取り組んでもらうよう企業サイドにも法律によって新たな義務を設ける予定です。環境は少しずつ変化していくはずなので、それと合わせて女性の皆さんにも、自分の成長を実感できるような仕事、周囲の人から信頼されるような仕事をしてほしいと思います。そのために、「自分にはちょっと無理そうかも」と感じることにもどんどんチャレンジしてほしい。後になって振り返ると、その経験がきっとあなたの生きる糧になり、人生を通して仕事に向き合える強い自分をつくっていくはずですから。

取材・文/上野真理子 写真/洞澤佐智子(CROSSOVER)

>>女性管理職がいる会社で働く
>>仕事と家庭を両立できる職場で働く

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